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宗教紛争から宗派横断共同体へ

 【国連IPS=カニャ・ダルメイダ】 

聖なる人間とその聖なる書物は、人類史に血と涙の痕跡を刻みつけてきた。平和な寺院の奥からは燃え盛るたいまつを手にした群衆が送り出され、聳え立つ教会の尖塔やミナレットからは、祈りに跪く敬虔な信者の頭上に憎しみのメッセージが流されてきた。あまりにも長きにわたって、宗教は暴力を誘発し、紛争を煽ってきた。 

しかし新しい連合が、さまざまな宗教の信者を糾合してこの流れを変えようとしている。つまり、真に宗教の違いを超えた国際社会の構築を求めて、「あなたの神」と「私の神」の間にある亀裂を、対話を通じて乗り越えようとしているのである。 

「宗教紛争などというものはありません。なぜなら、宗教は紛争を拒絶するものだからです。つまり、宗教の名のもとに行われる暴力は、宗教そのものに対する暴力でもあるのです。」と、政府間組織KAICIIDのファイサル・ビン・アブドゥルラフマン・ビン・ムアンマール事務局長は、ニューヨークで11日に開かれた記者会見の中で語った。 

ウィーンに本拠を置くKAICIID(宗教間・文化間対話のためのアブドラ・ビン・アブドゥルアズィーズ国王国際センター)は、オーストリア、スペイン、サウジアラビアの各国政府と、(創設時からのオブザーバーとしての)ローマ教皇庁から成る評議会によって構成されている。 

KAICIIDの理事には、世界の主要な5つの宗教(キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教、仏教)からの宗教的指導者が含まれ、平和維持や紛争予防、開発に地域の宗教組織や指導者を関与させエンパワーする積み上げ(ボトムアップ方式の)プロセスを強化しようとしている。 

KAICIIDは、世界の10人のうち8人が何らかの形の組織的な宗教を信じ、そのほとんどの人々が、自らを「平和を愛する人間(peace-loving individuals)」に分類する傾向にある、と推定している。 

ビン・ムアンマール事務局長は、「悲しむべきことに、政治家や過激主義者が、本来的には寛容で平和的な性格を持つ宗教的慣習を、自らの(しばしば暴力的で社会に分断をもたらすような)目的のために、乗っ取ってきた歴史があります。」と指摘したうえで、「従って、(他宗教間の)持続的な対話を通じてのみ、人びとは『他者』への恐怖を乗り越えて、より包摂的で寛容な世界に向けて努力する力を身に着けることができるのです。」と語った。 

KAICIIDが世界的な舞台に乗り出したことは、きわめて時宜を得ている。独立世論調査機関ピュー・リサーチセンター(本部:ワシントンDC)が、世界の人口の99.5%を占める198ヵ国をカバーして実施した最新の調査報告書によると、アメリカ大陸を除く全ての大陸において、宗教の絡んだ社会的敵対状況が悪化しているという。 

報告書は、「世界において宗教関連のテロ暴力が発生した国の数は、2007年には9%だったものが、2012年には5ヵ国に1ヵ国(=20%)へと、この6年間で倍増している。」と述べている。 

とりわけ中東・北アフリカ地域では、全体の半分にあたる国々が2012年に宗派間暴力を経験したことから、宗派間暴力に直面した国の世界平均値は2007年の8%から2012年には18%へと急増した。 

2011年から12年までの1年間で、きわめて高いレベルの宗派間対立を経験した国の数は14ヵ国から20ヵ国に増加した。そのうち6ヵ国(シリア、レバノン、バングラデシュ、タイ、スリランカ、ビルマ)は、2012年に比べて2011年には比較的低レベルの対立しか見られていなかった。 

また同調査によると、宗教的マイノリティにとっての状況も悪化している。2012年には全調査対象国の47%にあたる国々でマイノリティを標的にした襲撃事件が発生していたが、前年の38%から9%も増加している。 

「例えば仏教徒が多数派を占めるスリランカでは、仏僧がイスラム教徒やキリスト教徒の礼拝場を襲撃している。2012年4月にはダンブラのモスクが襲われ、2012年8月には、ダニヤヤのセブンスデー・アドベンチスト教会が占拠されて強制的に仏寺に変えられる事件が発生している。」と報告書の著者は記している。 

しかしKAICIIDによると、このような暗い状況も、転換することは可能だという。KAICIIDのムアンマール事務局長は、先週国連の潘基文事務総長と面会し、宗教間暴力を減らすという目標に向けて国連とKAICIID間の協力の可能性について検討した。 

文書の上では、国連はすでに、対話を通じた宗教間理解と平和の問題に尽力していくことを公約している。国連「文明の同盟」(UNAOCのような機関は、「紛争を予防し社会の調和を促進することをめざし、諸国家あるいは同一アイデンティティを持つ諸集団の間の理解を促進する」との目標をミッション・ステートメントに掲げている。 

しかし、KAICIIDの活動が焦点を当ててきたように、草の根レベルで人々を関与させる集中的な努力がなければ、せっかくの高尚なビジョンも現実にはなりえない。KAICIIDは活動開始からわずか2年で、2012年の紛争勃発以来、数百人が殺害され50万人が住む場所を追われた中央アフリカ共和国において宗教間対話を成功させるなど、目覚ましい成果をみせている。 

「5月8、9日から、私たちは同じような活動をしている他の諸団体との連携を確保する一方で、中央アフリカ共和国の宗教指導者と協力して、彼らが他のアフリカ諸国の宗教指導者と連絡を取り合えるよう仲介を図ってきました。」と、KAICIIDのプログラム責任者ヒラリー・ウィーズナー氏は語った。 

「私たちは、世俗的な団体として外から関与するのではなく、内側から宗教共同体に関わるようにしています。そうすることで、KAICIIDと地域の宗教指導者の間の信頼感を醸成することができるからです。また、宗教を基盤にした団体は、全て合わせると世界最大の市民社会活動になるわけですから、こうしたアプローチは極めて重要だと考えています。」とウィーズナー氏は語った。 

宗教と世俗的な開発の間のギャップ解消に取組んでいる「世界宗教対話開発機構」(WFDDのキャサリン・マーシャル代表は、「サハラ以南のアフリカでは、保健サービスの7~70%が宗教関連の組織によって提供されています。」「こうした宗教関連組織は、世界最大のサービス提供システムを構成しており、国連の全加盟国にあたる193ヵ国が2000年に合意した貧困削減目標である『ミレニアム開発目標』(MDGsを達成するうえで不可欠な存在なのです。」とIPSの取材に対して語った。 

世界銀行が2008年に行った調査によると、アフリカ大陸各地の宗教団体が、政府が残した隙間を埋める役割を果たしていた。例えば、福音派の慈善・開発団体「ワールド・ビジョン」は、2002年に対アフリカ支援予算として12億5000万ドル(約1271億円)を組んでいた。 

マラウィでは、「教会キリスト教奉仕団(CSC)」が、同国政府の開発予算全体を上回る規模の年間予算で活動していた。 

また南アフリカ共和国では、カトリック教会が2012年、同国政府よりも多くの抗レトロウィルス(ARV)療法HIV/AIDS患者に提供していた。 

しかしこうした宗教団体が持っている大きな潜在力は、世界のメディア報道の見出しを頻繁に飾っている(宗教に関する)否定的なストーリーによって、往々にしてかき消されてしまっている。

「(現在メディアのヘッドラインを飾っている)宗教の負の側面に関する最悪の事例と言えば、中央アフリカ共和国やマリでの宗教紛争は言うに及ばず、ウガンダやナイジェリアにおける反同性愛法案のような問題が含まれます。」とマーシャル代表は語った。 

「まず最初に知識が必要であり、そして次に宗教リテラシー(宗教的識字率/宗教知識の展開能力)が必要なのは、まさにこのためなのです。開発分野に従事している人々の中で、例えば、カトリック司教会議がどこで開かれているのかとか、スンニ派シーア派ムスリムの違いは何かといったような、宗教生活の複雑さに関する教育を受けている人があまりにも少ないのが現状です。」とマーシャル代表は語った。 

またマーシャル代表は、「もう一つの忘れられている問題は、平和維持における信仰に生きる女性の役割です。宗教とのつながりがある女性は、修道女であれイスラム教徒であれ、公式の地位を持たないために、目に見えない傾向にあります。しかし、彼女たちの活動の多くは、平和のための最も重要な活動なのです。」と語った。 

ウィーズナー氏が言及しているように、「宗教は文化の一部分に還元できるわけではない。個人や社会の生活における宗教的・精神的側面はそれよりも遥かに奥深いものである。私たちは、全ての人々のよりよき生のために、こうした信仰に生きる責任ある道を推進する必要がある。」(06.16.2014) IPS Japan