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平和と自由の力としてのジャズ

古代ギリシャの哲学者プラトンは「音楽は、世界に魂を与え、精神に翼をあたえる。そして想像力に高揚を授け、生命とあらゆるものに魅力と快活さを授ける。」と語ったと言われている。平和と自由を志向する世界市民性を育むうえで、ジャスほど相応しいものがあるだろうか?

【パリIPS=A・D・マッケンジー】

米国東部のメリーランド州ボルチモアで暴動が起こる中、4回目となる「国際ジャズデー」を祝うイベントが世界各地で開かれ、平和や団結、対話を求める呼びかけがなされた。

「私たち一人一人が平等です。そして私たち皆が『故郷』と呼ぶこの場所(=地球)に住んでいるのです。」「私たちは数々の難題を解決する方策を見いだすために、あらゆる努力をしていかなくてはなりません。」とアメリカジャズ界のレジェンド、ハービー・ハンコック氏は語った。

4月30日に行われたイベントの主催者は、ボルチモア警察の留置場で亡くなったアフリカ系アメリカ人で地元住民のフレディー・グレイ氏の葬儀を機に暴動にまで発展した抗議行動について直接言及はしていないが、ハンコック氏はIPSによる独占インタビューのなかで、「(イベントに参加した)音楽家らは、ボルチモアの事件をはじめ様々な事件を意識しています。」と語った。

「被害者がアフリカ系アメリカ人やアフリカ系文化の伝統を引き継ぐ人々に限らず、女性が殺されたり、子どもが虐待されたり、あるいは特定の民族集団が抑圧される事件など、こうしたことが起きるたびに、私たちアーティストは現状を変えるために行動を起こさなければならないと考えています。こうした行動を通じて、音楽に価値と意味を持たせることができるのです。」とハンコック氏は語った。

「国際ジャズデー」はハンコック氏の発案によるもので、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が毎年、テロニオス・モンク・ジャズ研究所(米国)との協力の下、実施している。主催者は、「自由と創造性を生み出すジャズの力」を後押しし、それに焦点を当てることが目的である。」としている。

また、「尊重と理解を通じて文化間の対話を進め、世界のあらゆる場所の人びとを団結させる」ことも目指している、とユネスコは述べている。

ハンコック氏は、「2016年の国際ジャズデーでは、米国のバラク・オバマ大統領とミシェル夫人がホストを務め、ワシントンDCのホワイトハウスで『オールスター・グローバル・コンサート』という一大イベントを開催します。」と発表した。これは2012年に始まったこのイベントがいかに重要な意義を帯びてきているかを物語るものだ。

「1年ぐらい前に、あるイベントでオバマ大統領と話をしたときに、『ぜひ実現したいね』、と言ってくださいました。ただ少し話しただけですから、それが約束だとは思っていませんでした。しかしオバマ大統領は本当に実現してくださいました。来年のコンサートはホワイトハウスで開催します。」とハンコック氏はIPSの取材に対して語った。

3年前にパリで始まったグローバル・コンサートのホストとなった都市は、2013年はイスタンブール(トルコ)、昨年は大阪だった。

2015年はパリが再びホスト都市となり、ジャズ愛好家らは、このフランスの首都で1日中行われたパフォーマンスや教育プログラムを楽しんだ。ワークショップや音楽セミナー、討論、ジャムセッションなどが、コミュニティーセンターから無料食堂にいたるパリ市内の様々な場所で開催された。

「オールスター・グローバル・コンサート」は、ユネスコ創設70周年にあわせて同本部の満員のホールで開催された。会場には、国連の潘基文事務総長、長年差別と闘ってきたフランスのクリスチャーヌ・トビラ司法大臣など、国連やフランス政府の高官が足を運んでいた。

「ジャズには教えられることが多くあります。」「私は事態が難しくなってくると、即興が大事だということを(ジャズから)学びました。」と潘事務総長は語った。

潘事務総長を初めとした、多様な文化的背景を持つ観客は、著名なアーティスト30人が登場するエンターテイメントをゆったりと楽しんだ。コンサートはまず、ボーカリストのアル・ジャロウ氏が登場して会場を盛り上げ、続いて南アフリカ共和国のアーティスト、ヒュー・マセケラ氏による感情を揺さぶる故ネルソン・マンデラ氏へのトリビュート・ソングへと移った。

このコンサートは、潘事務総長が述べたように、まるで「ミニ国連」のようであった。ハンコック氏や(今回のイベントの音楽監督も務めた)ジョン・ビーズリー氏のようなアメリカのピアニストに、ブラジルのボーカリスト、エリアネ・エリア氏、スコットランドの歌手アニー・レノックス氏、ウード[楽器の一種]の名手でチュニジア人のダファー・ヨセフ氏、フランスのパーカッショニスト、ミノ・シネル氏、中国の10代のピアノ奏者ア・ブ氏など多くのアーティストが加わり、ジャズとその影響力を称えた。

「音楽家は、寛容と相互の尊重、世界平和のために活動しています。」と語るハンコック氏は、「私は、対立する側に属する音楽家らが心を一つにして、最も美しい音楽を奏で、甘い物語を語るのを見てきました。」と会場の聴衆に語りかけた。

まるでジャズの「人名事典」のようなコンサートには、次のような音楽家も参加していた。ジャズミュージシャンに門戸を開き歓迎してくれたフランスに感謝の辞を述べた歌手のディー・ディー・ブリッジウォーター氏。ワシントンDC生れの若きベーシストベン・ウィリアムズ氏や、ウード奏者のヨセフ氏と世界初公開となる作品を演奏したサックス奏者のウェイン・ショーター氏。パワフルな音楽で会場からの喝采を受けたボーカリストのダイアン・リーブス氏と、(どちらかというとロック歌手として知られる)アニー・レノックス氏

開会にあたってユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長は、「ジャズとは対話を意味し、他者に手を差しのべ、全ての人々を仲間に引き入れるものです。ジャズとは、どのような出自を持つ者であれ、すべての人間の人権と尊厳を尊重することを意味します。ジャズとは、他者を理解し、他者に語らせ、尊重の精神をもって耳を傾けることを意味するのです。」と語った。

「私たちがここに集いジャズを称えるのは、まさにこのためなのです。この自由の音楽は平和への力であり、そのメッセージが激動の時期にある今日ほど求められている時はありません。」と、ボコヴァ事務局長は付け加えた。

他の国でも、「国際ジャズデー」を祝うイベントが開催された。南アフリカ共和国では、「変革を成し遂げる」というテーマでワークショップやセミナー、演奏会が開催されたほか、米国では、受賞歴のあるアーティストらがニューオーリンズなど各地でコンサートを開催した。(05.02.2015) IPS Japan